マニラ、フィリピン(2020年1月7日)-本日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、近く離任する中尾武彦・アジア開発銀行(ADB)総裁に、フィリピンにおいて民間人に贈る最高位の栄誉にあたるシカツナ勲章のグランドクロス、またはダトゥの位の金賞をマラカニアン宮殿で授与した。
フィリピン財務大臣およびADB総務を務めるカルロス・ドミンゲス氏は、「ADBの舵取り役を担う中尾氏は、フィリピン人を貧困から解放し、フィリピンが高位中所得国へ移行するための政府による抜本的な改革と野心的な開発プログラムを支援する真のパートナーである」としたうえで、「中尾氏のリーダーシップの下、ADBはフィリピンのインフラ需要を埋め、地元のビジネス環境の強化や農村開発を促進し、ミンダナオの永続的な平和の実現に向けたプログラムへの融資コミットメントを拡大させ、ドゥテルテ政権による迅速かつインクルーシブな成長のための包括的な開発戦略の実施能力に対して全幅の信頼を寄せた」と述べた。
シカツナ勲章は、1953年にエルピディオ・キリノ・フィリピン元大統領により制定されたフィリピンの栄典制度である。フィリピンとの関係を発展、強化するうえで顕著な功労のあった外国人に対して贈られる。
中尾武彦ADB総裁は、「この勲章を受けることは大変光栄なことであり、ドゥテルテ大統領、ドミンゲス財務大臣およびフィリピンの国民に対して、心から感謝の意を表します」としたうえで、「1966年のADBの設立以来、フィリピン政府によるホスト国としての長年にわたる支援は、アジア・太平洋地域におけるADBの事業の成功に不可欠であった。ADBは、設立当初からの加盟国であるフィリピンの主要な開発パートナーであり、特に過去3年間において、その支援は大幅に拡大している」と述べた。
中尾氏はまた、フィリピン政府が主催した2018年のADB年次総会の成功にも言及し、「この年次総会開催にあたっては、ADB総務会で議長を務めていたドミンゲス大臣と私自身が緊密に協働し、大臣から、年次総会をより効率的かつ焦点を絞ったものにする方法について貴重なアドバイスを受けた」と述べた。
中尾氏は2013年4月28日にADBの総裁に就任した。同氏のリーダーシップの下、フィリピンでのADBの事業は飛躍的に拡大した。 ADBはドゥテルテ政権による「ビルド、ビルド、ビルド(BBB)」プログラムや農村開発や人的資本への投資を含む「主要社会経済政策10項目」を支援している。 ADBによるフィリピン向けソブリン融資は、以前の年間融資コミットメントの平均約8億ドルと比較して、2018年には14億ドルに達し、2019年には過去最高にあたる25億ドルを記録した。また、ADBはフィリピン政府に対して、税制改革イニシアティブや義務教育期間を10年から12年まで延長させるための能力強化を支援している。
2019年のADBによる支援額の約半分は、BBBプログラムのもと、政府の主要なインフラ投資の一つとして実施されているマロロス-クラーク鉄道プロジェクトの第1フェーズに対する融資で占められている。2022年に一部で開通が予定されている同プロジェクトへの合計支援額は27億5,000万ドルとなる見込みで、これはADBによるプロジェクトファイナンスとして過去最大である。本年第2四半期には建設作業の開始を予定している。
中尾氏のリーダーシップの下で作られた対フィリピン国別支援戦略2018〜2022年は、同国に対するさらなる支援の拡大の道を開いた。2022年までのADBによる支援計画には、鉄道、橋梁、洪水リスク管理、灌漑など、多数の主要インフラプロジェクトが含まれる。さらに、ADBは融資と技術協力を通じて、政府によるバンサモロ和平プロセスを支援していく。 ADBはまた、同国における投資環境、公共財政管理、地域経済の発展を促進するための政策改革への支援を行う予定である。
中尾氏は1月16日にADBの総裁職を辞任する。1月17日には、2019年7月まで日本の財務省で財務官を務めていた浅川雅嗣氏が新総裁に就任する。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。