【中国・香港、2017年4月6日】アジア開発銀行(ADB)は、本日発表した報告書の中で、技術革新や教育、インフラの改善を基礎とする生産性の向上に資する改革が、アジア太平洋地域における開発途上国から高所得国への転換に有益であると述べた。
ADBは、主要経済刊行物である『アジア経済見通し(ADO)2017年版』(Asian Development Outlook(ADO) 2017)において、特別テーマとして、アジアの中所得国の一層の発展を取り上げている。
「アジア太平洋諸国では、これまでの開発の成果により、今や人々の大半が中所得国に住んでいる」と、澤田康幸ADBチーフ・エコノミストは述べている。また「政策当局は高所得社会の実現に向けて取り組み方を変える必要がある。もはや経済成長の維持のみを目標にさらなるリソースを費やすのではなく、各国が最後のハードルを越えるには生産性の向上が必要だ」とした。
報告書によると、1991年時点でアジア太平洋地域において中所得国の人口は全体のわずか10%であったが、2015年になるとその比率は95%超に上昇している。これは、この地域で最も人口が多い中華人民共和国、インド、インドネシアにおける経済成長によりもたらされたものである。
アジアの開発途上国は、生産性向上のために技術革新に取り組む必要がある。中所得国から高所得国へ順調に成長できた国は研究開発の蓄積度が他の中所得国の2.5倍以上に達している。
技術革新の実現には熟練の労働力を必要とするが、そのためには教育の質の改善が必須である。報告書によると、1人当たりの人的資本支出を20%増加すれば労働生産性は最大で3.1%伸びると予測されている。また、技術革新や起業家精神を奨励する一方で、適切な教育政策を実施することにより、公平性を促進し、アジアの開発途上国と高所得国との間の大きな教育格差の是正を図ることができる。
インフラ投資、その中でも特にエネルギーや情報・通信技術に関わるものは、中所得国における技術革新や人的資本の蓄積、ひいては経済成長の維持に大きく貢献する。国内総生産の1%相当のインフラ公共投資をただ一度行うだけで、国の総生産を7年で1.2%底上げすることができる。
高所得国への転換は難しい課題ではあるが、アジアにおけるこれまでのダイナミックな経済発展の軌跡に鑑みれば、十分達成できるであろう。安定したマクロ経済を基盤として、生産性向上のための柱である技術革新や人的資本、インフラは、それらを支えるより良い制度と政策により強化することができる。