【横浜、2017年5月5日】アジア開発銀行(ADB)は新しい業務評価報告において、2013〜2016年の4年間にわたる開発と業務に関する目標の大半を達成し、アジア太平洋地域への開発金融を増やすという長期目標を実現しているとした。
『2016年開発効果概観』(2016 Development Effectiveness Review: DEfR)は、横浜で開催されているADB第50回年次総会にて発表された。同報告書は、ADBが自らの組織戦略である「ストラテジー 2020」とその中間見直しの戦略的優先事項をどの程度実現しているかを、91の結果指標にわたって評価するものである。
ADBのインドゥ・ブシャン戦略・政策局長は、「ADBは、アジア太平洋地域における貧困削減と、よりインクルーシブで持続可能な開発実現のための支援をするというコミットメントを果たしている」としたうえで、「ADBは、今後も地域への支援をスケールアップしつつ、より迅速かつ効果的に開発課題への解決策を提供できるよう、引き続き業務の効率化を進めていく」と述べた。
ADBの第10回年次業務評価である2016 DEfRによると、ADBは開発成果、業務の有効性、そして組織の有効性の分野で、全目標の62%を達成、あるいは目標を上回った。同報告書は、2013〜2016年における成果フレームワークの4回目かつ最終の報告書である。
2016 DEfRの主な内容としては、ADBの気候変動緩和関連プロジェクト、および再生可能エネルギーを含むエネルギー関連プロジェクトが、2016年の目標アウトプットを100%達成したことが挙げられる。ADBの全プロジェクトの半数近くが、気候変動の緩和と適応に関する取り組みを支援した。
2013〜2016年にADBは、3万4,000キロの道路と1,400キロの鉄道の建設・改修、13ギガワットの発電能力を持つ設備の新規設置(うち3分の1は再生可能エネルギー)、そして69万2,000戸を電力網に繋げるための資金援助を行った。また、300万戸の住居の水道を新設または改修し、570万人の金融サービスへのアクセス(うち40%は女性)を改善した。さらに、200万人以上の教員を対象に研修を実施した。全プロジェクトの4分の3近くが、ジェンダーに関する課題をどの程度プロジェクトに取り入れているかを評価するジェンダー・メインストリーミングに対するADBの目標を達成した。
2016年にADBは、自らの財源による資金で175億ドルを承認し、協調融資で139億ドルを動員した。いずれもこれまでで最高額となる。また、実行額は124.8億ドルとなり、これも過去最高に達した。さらに官民連携パートナーシップにおいても目標を上回り、2013〜2016年の目標であった50件を超える58件の開発案件を支援している。
2016 DEfRは、3年単位でのプロジェクト成功率の向上を指摘する一方、プロジェクト設計、開始時におけるプロジェクトの質、およびノンソブリン・プロジェクトに対するリスク評価の改善を通じて、さらに優れた結果を出すことができるとしている。プロジェクトの持続可能性(ADBのプロジェクトが持続的な成果を挙げる可能性)も改善したが、目標であった80%には及ばなかった。これは、特に運営と維持の面において、いくつかの問題点があったことが原因である。また、調達とプロジェクト承認・実施のプロセスに長い時間がかかることも課題となっている。
ADBはこうした課題に対応するため、策定中の新たな長期戦略「ストラテジー2030」に沿った新成果フレームワークの準備を続けつつ、2017〜2020年における暫定成果フレームワークを実施する。調達に関する第2世代の改革を通じて、プロジェクトの準備態勢を強化し、遅延を減らし、効率性を改善し、全体の成功率を引き上げる取り組みを行っている。また、より強力で、より良く、そしてより迅速なADBを目指し、女性専門職員の割合を増やすとともに人材を最大限に利用する措置を講じている。
マニラに本拠を置くアジア開発銀行(ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、インクルーシブな経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促進を通じて、アジア太平洋地域の貧困削減に取り組んでいる。ADBは、1966年に創設され、地域の開発パートナーとして50周年を迎えた。2016年のADBの年間支援額は、317億ドルであった。