フィリピン・マニラ(2021年12月14日) — アジア開発銀行(ADB)は、コロナウイルス感染症の感染拡大により第3四半期の成長率が鈍化したことを受け、アジア開発途上国の経済成長見通しを2021年は7.0%、2022年は5.3%にわずかに下方修正した。

ADBによる最新の予測は、主要経済報告書「アジア経済見通し2021年版 」(Asian Development Outlook 2021: ADO 2021)の定期補足版として発表されたもので、ADBの9月の予測である2021年7.1%、2022年5.4%との比較である。2021年の見通しは、中央アジアを除くすべての地域でわずかに下方修正された。

ジョセフ・ズベグリッチJr. ADBチーフエコノミスト代理は、「アジア開発途上国では、ワクチン接種の継続や封じ込め策のさらに戦略的な適用を通じて、新型コロナウイルス感染症への対応が着実に進み、年初の成長予測は押し上げられた」とした上で、「しかし、第3四半期に発生した新たな感染拡大がGDPの成長を鈍化させ、オミクロン株の出現が新たな不確実性をもたらしている。復興の取り組みには、こうした進展を考慮に入れなければならないだろう」と述べた。

成長見通しに対する主なリスクは、依然として新型コロナウイルス感染者の再拡大である。世界の1日あたりの平均感染者数は、10月15日の404,000人から11月30日には約573,000人に増加した。アジア開発途上国のワクチン接種率は、11月30日現在48.7%(2回接種済)と著しく上昇したが、この地域は依然として、米国の58.1%やEUの67.2%には及ばない。2回のワクチン接種を受けた人の割合も、最も高いシンガポールの総人口比91.9%から最も低いパプアニューギニアの2.2%まで、同地域内で大きく異なる。

アジア開発途上国の全体的な傾向に反して、中央アジアの経済は、商品価格の上昇と公共支出の増加を反映して、2021年は4.7%の成長が見込まれている。2022年の見通しも、9月時点の予測の4.2%から4.4%に上方修正された。

東アジアの成長見通しは、同地域最大の経済大国である中国の成長予測が若干下方修正されたことを受け、2021年と2022年の成長予測はいずれも0.1%下方修正され、それぞれ7.5%と5.0%になった。中国経済は、2021年8.0%、2022年5.3%の成長が見込まれている。

南アジアは、2021年に8.6%の成長が見込まれているが、9月時点の予測では8.8%だった。同地域の2022年の成長見通しは7.0%にとどまっている。南アジア最大の経済大国であるインドは、2022年3月31日に終了する2021会計年度において、9.7%の成長が見込まれている。産業に影響を与えているサプライチェーン問題の渦中にあり、0.3%の引き下げが行われた。インドの2022年度の見通しは、内需の正常化が見込まれることから7.5%に据え置かれている。

東南アジアの2021年の見通しは、新型コロナウイルス感染症のデルタ株に直面して、域内の経済が対象を絞った制限を課したため、0.1%下方修正されて3.0%となった。2022年の経済成長予測は5.1%で、全般的な規制緩和と経済活動の回復が続くものと予想される。太平洋地域の2021年の成長見通しはマイナス0.6%に据え置かれ、2022年は4.7%に若干下方修正されている。

地域別のインフレ率は2021年に2.1%、2022年には2.7%と、引き続き管理可能な水準で推移すると見込まれており、これによりさらに緩和的な金融政策が可能となり、パンデミックからの復興の取り組みを支えることになる。

ADBの年次主要経済報告書である「アジア経済見通し(ADO)」は毎年4月に発行され、その「改訂版(Update)」が9月に、そして通常は7月と12月に簡潔な補足版が発行される。アジア開発途上国とは、46のADBの開発途上加盟国・地域を指す。

ADB は、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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